~日本書字文化協会機関紙 No89~
令和3年(2021年) 6月号

◇大平恵理会長ご挨拶
◇第10回総合大会開催へ
◇同大会指定課題・解説一覧
◇書文協人模様(1)野口芳宏顧問
◇令和3年度の主な事業

(第10回総合大会の「ひらがな・かきかたコンクール」
応募締め切りは7/23です。同大会の実施要項、課題・解説一覧は書文協ホームページに掲載されています)

一般社団法人日本書字文化協会(書文協)
本部 〒164-0001 東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階
電話03-6304-8212 / FAX03-6304-8213
Eメールinfo@syobunkyo.org ホームページhttps://www.syobunkyo.org

ご 挨 拶

一般社団法人・日本書字文化協会
代表理事・会長 大平 恵理

防疫を万全にし、非常事態を乗り切ります

先月25日から発令された3度目の緊急事態宣言は、6月20日まで再延長され、沖縄県を除き解除されました。私どもは、市民の一人として日常生活で可能なことは最大限にやらなくてはいけないと思います。
書文協も公序良俗を守る団体として、事態に真剣に対応していきます。その上で、書写書道を学ぶ灯は消しません。検定・ライセンス試験、各種コンクールも実施して参ります。オンラインも活用しつつ進めて参ります。
ただ、各方面とあまりにご無沙汰が続き、申し訳なく思っています。事業の方も止むなく滞る部分が生じ、つい先日も第6回書文協臨書展の審査結果発表の遅れについて、出品者、後援団体に”詫び状“を送らせていただいたばかりです。そのほか、課題手本の発売など、少しずつ遅れていることがいくつもあります。改善するように全力で取り組んでいますので、ご寛恕ください。

月刊書字文化に「書文協人模様」掲載を始めます

ただ、コミュニケーション不足をこのままにしておくのは良くありません。そのため、当協会機関誌「月刊書字文化6月号」から「書文協人模様」の掲載を開始します。会員同士が交流する一助になることを期待しています。1回目は書文協顧問、野口芳宏先生(85)です。コロナ禍に負けない、先生のパワフルな日常をお伝えします。
なお、当号では第10回全国書写書道総合大会の指定課題・解説一覧を掲載しますが、ホームページにすでにアップされていますのでご覧ください。

第10回全国書写書道総合大会開催へ
実施要項、課題・解説一覧、参考手本はホームページに

秋恒例の総合大会を今年度も開催いたします。同大会は「ひらがな・かきかたコンクール」「全国学生書写書道展」「全国硬筆コンクール」で構成されており、実施要項(予定含む)、指定課題・解説一覧、参考手本は書文協ホームページ(hyyp://www.syobunkyo.org)に掲載されています。評価の観点も後日、掲載予定です(ホームページ中段の横メニューの右から2つ目「大会」にカーソルを当てると、項目がプルダウン表示されます。その中の総合大会をクリックしてください)
一番締め切りが早い「ひらがな・かきかたコンクール」を案内します。

令和3(2021)年度ひらがな・かきかたコンクール案内

ひらがな・かきかたコンクールの締め切りは7月23日(金)必着です。

審査結果発表予定

2段階で発表します。第1段階は出品者全員を対象に本賞(特選、金・銀・銅賞)についてお知らせします=9月上旬予定。第2段階はその中から特別賞に選ばれた人について発表します=10月下旬予定。第一段階で作品の記念アルバムの申し込み案内についても同時に送ります。いずれも賞状・賞品の発送をもって発表とします。特別賞は全体の1.5%以内の出品者に授与され、その審査会は10月上旬の開催予定です。

賞品
本賞(特選・金・銀・銅賞)は子どもたちが強く待っていることから、これまで通りメダルバッジとする予定です。

出品料・参加費(1点当たり、消費税10%込み)出品規定 実施要項にも
1点当たり 団体出品550円  個人出品1,650円
*出品料は前回と同額です。*団体出品とは、出品作品のとりまとめ、発送、審査結果(賞状・賞品)の一括受け取りを行う代表者がいる場合をいいます。出品することで団体登録されます。出品合計金額が3,000円を超えない場合は、1,000円をプラスした出品料を振り込んで下さい。事務処理上の必要です。

第10回全国書写書道総合大会
学生書写書道展、硬筆コンクール指定課題

総合大会で早く締め切られる「ひらがな・かきかたコンクール」(2021・7・23締切)の課題は先に発表しました。今回は残る「学生書写書道展」と「全国硬筆コンクール」(2021・9・17締切)の指定課題を発表します。学生展は、席書・公募の両部とも同じ指定課題です。公募の部では、用紙の大きさ(半紙、八ツ切、半切、地域指定用紙)が違えば1人3点まで応募できます。都道府県によっては、独自の八ツ切の使用を求めているところがありますが、この地域指定用紙での八ツ切出品も可能です。(その他要項ご参照)

「スポーツに親しもう」を共通テーマに

書写書道の言葉とは縁がなさそうなスポーツ。しかしスポーツは五体を使って肉体の限界に挑み、精神の特徴が結果に響きます。同じく肉体を使い、メンタルにも大きく左右される書写書道とスポーツは似ていませんか。
今年夏に予定されている東京オリンピック、パラリンピックは状況により予断をゆるしませんが、開催の有無に関係なく、書写書道を学ぶ私たちもスポーツに関心を持ちたい、と思います。第6回総合大会の学生展・硬筆コンは、スポーツに関連する課題を集めることにしました。同じ共通テーマの第6回総合大会を中心に、過去大会で出題された課題で構成しました。書塾、お教室でも一度手掛けた課題なので時節柄、指導の先生方の負担軽減にもなります。

この解説は主に指導者を対象に書かれています。教室で先生と生徒がスポーツについて対話し、一緒に考える一助になれば幸いです。

表記上の注意
◎漢字は学習指導要領の学年別漢字配当に従い、年度前半大会であることから前学年までの漢字使用を原則としています。
◎漢字・仮名遣い、句読点は原文通りでない場合があります。詩歌、漢文以外でも句読点を省く場合があります。

見本手本は6月上旬、評価の観点は6月下旬に発表

見本手本(毛筆はA3判、硬筆は共通清書用紙による原寸大)は希望者には6月上旬から発売します。書文協ホームページにも掲載され、印刷は自由です。手本通りに書かなくてはいけないということではありません。また、流派を超えた審査が書文協の理念です。止め、はね、払いや点画など、身に付けなくてはいけないルール、技術をしっかりと手本から読み取ってください。指定された大きさの用紙に書く際の文字の配置、配列も手本を参考にしてください。技法、ルールのポイントを指定課題文言にそってまとめた「評価の観点」も、書文協ホームぺージ上で発表されますので、参考にして下さい。発売される手本は1枚当たり毛筆97円、硬筆は37円(共に消費税別)。幼稚園・保育園・学校単位での応募は、応募者1人につき手本と清書用紙2枚を無料とします。送料はご負担ください。

作品化奨励に表装(毛筆)、記念アルバム(硬筆)製作発売

書文協では書写書道作品の作品(展示)化を奨励しています。毛筆でも硬筆でも、人に鑑賞してもらうことが書の楽しみの一つとなります。また、展示作品化して残すことは、書の学びの軌跡となり、継続する力の原動力となるでしょう。
応募作品は原則として書文協に帰属しますが、ご注文いただくことで硬筆は記念アルバム(本人の作品・写真、賞状のレプリカを配した特製)をお送りします。複数の作品化希望の場合は、2冊目からは複写作品となります。毛筆は紙表装、もしくは本表装の掛軸となります。価格、申込締め切り日などは、結果発表の際にお知らせします。

【令和年度ひらがな・かきかたコンクール】

作品はマス目、罫線など6種類ある硬筆共通清書用紙に書きます。

学 年用 紙課  題
年中以下硬筆共通清書用紙①しろ
年長ことり
小1硬筆共通清書用紙②そらのいろ
小2とおいやまをみる。
小3硬筆共通清書用紙③あおいうみに、ふねがうかぶ。

【令和3年度学生書写書道展】

いずれも用紙縦使用、縦書きです。

学 年用紙課  題
年少八ツ切
年中
年長ひく
小1はしる
小2ふみきる
小3つよい心
小4山に登る
小5仲間の力
小6天下の険解説作詞:鳥居忱、作曲:瀧 廉太郎の唱歌 「箱根八里」の「箱根の山は天下の険…」から
中1一球入魂解説いっきゅうにゅうこん。それぞれのプレーに心を込める。
中2中央突破解説闘い方の一つ。敵陣の真ん中を突き破る。
中3強い精神力解説勝つことだけでなく失敗を恐れないことが強い精神力を生む。
高校半切漢字平常心是道解説禅語。へいじょうしんこれみち。あるいは、びょうじょうしんぜどう。
いろいろ 揺れ動いても動じない平穏な心でいたい。
仮名春風や まりを投げたき 草の原解説明治の俳人・歌人、正岡子規は野球を愛し、句も多い。
夏草や ベースボールの人遠し
大学漢字知彼知己百戰不殆 解説彼を知り己を知れば百戦殆(あ)やうからず。彼を知らずして己を知るは一勝一負す(孫子の兵)。
不知彼而知己一勝一負
仮名陸奥をふたわけざまに聳えたまふ 蔵王の山の雲の中に立つ解説精神科医にして歌人、斎藤茂吉の作。高山に登る醍醐味を詠う。「陸奥(みちのく)をふたわけざまに聳(そび)えたまふ蔵王の山の雲の中に立つ」

【令和3年度全国硬筆コンクール】

作品はマス目、罫線など6種類ある硬筆共通清書用紙に書きます。

学 年用 紙課   題
年少硬筆共通
清書用紙
なげる解説「投げる」は人の大事な力
年中
年長おうえん解説他の人を応援することもスポーツマンシップの現れです。
小1硬筆共通
清書用紙
ちからいっぱいはしりました。解説走る、はスポーツの基本です。
小2とびばこで
四だんをとべました。
解説小学校低学年で器具を使った運動として跳び箱があります。
小3硬筆共通
清書用紙
おうえん合せんを
声がかれる
までしました。
解説グループに分かれての応援合戦は運動会の華です。
小4うちあぐる
ボールは高く
雲に入りて
また落ち来る
人の手の中に
解説明治の文学者、正岡子規は 野球を愛しました。課題の感覚はよく分かります。「歌よみに与ふる書」などで短歌革新に努めた。創刊した俳句雑誌「ホトトギス」は有名。
小5硬筆共通
清書用紙
ナイターの 光ぼう大河
へだてけり


春風や とうしいだきて 
おかに立つ
解説前は水原秋櫻子の作。光芒(こうぼう)は尾を引く光の筋。球場の夜空を割く光を大河と見たか。後の高浜虚子の句からは強い決意を感じますね。共に著名な俳人。
小6試合が終われば、敵も味方もなく、皆仲間です。
スポーツの素晴らしいところは、このノーサイド精神です。
解説書文協のモットー「成績にはこだわるが、結果にはこだわらない」。みんな仲間の切磋琢磨の精神と同じ。
中学硬筆共通
清書用紙
これからの時代は、異なる文化や生活の中で生きる人々が、たがいに理解し尊重し合って、共存できるような世界にしていくことが大切です。解説書文協ことば会議作。相互理解と尊重、そしてそれが生み出す平和的共存は、スポーツにおいてもとても重要です。スポーツマンシップの根底は、お互いの理解と尊重であると言えるでしょう。
高校硬筆共通
清書用紙
オリンピックで最も重要なことは、勝つことではなく参加することである。同様に、人生において最も重要なことは、勝つことではなく奮励努力することである。解説近代オリンピック第1回大会を開催したクーベルタン男爵の言葉
大学(配置、配列は自由)
一般

書文協人模様 その1・野口芳宏先生

当協会機関紙・月刊書字文化の6月号から「書文協人模様」を掲載します。時節柄、どうしても閉じこもりがち。今こそ交流が大事です。人模様欄はその一助になれば、と創設しました。

最初に、書文協顧問、野口芳宏先生(85)=千葉県君津市在住=に登場いただきます(写真)。“国語教育の神様”として絶大な信頼を寄せる教師の方々も多く、忙しい毎日を過ごされています。約束の時間に電話を入れると「いやー、どうも、どうも」と張りのある元気なお声が返ってきました。2月で85歳になられましたが、週に一度はオンラインで勉強会をやる相変わらずの猛烈ぶりです。

                       (構成・文責は編集部・谷口泰三)

― 時節柄とは言え、ご無沙汰続きですみません。こういう時ではありますが、書文協は書写書道の学びは止めない決意で、検定・大会など主な事業は続けています。それでいいでしょうか。(写真は野口先生)
野口 続けていいのです。何もしないでじっとしているわけにはいきません。ただし、防疫はしっかりとやることが必要です。

野口先生のことを知ったのは、当協会代表理事・会長の大平恵理が、NHKで、野口先生を紹介する番組を見たのがきっかけです。授業道場・野口塾などを開いておられることが分かりました。書写書道の学びは言葉の力を養う学びでもある、と言うのが書文協の考え方。面白そうな先生だと、スタッフが各地で開かれる野口塾に顔を出しました。

口先生に直接会ってお話したのは、2007年6月14日という記録が残っています(次ページ写真。右は野口先生、左は谷口)。大平恵理会長と谷口の二人が、東京・神田の学士会館談話室で、文字教育に込める思いをじっくりと聞いていただきました。正しく、美しい日本語の継承・発展と言う理念をとてもほめていただき「文字を書くことを教えるのは、自分では十分にはできなかったが、専門の国語学の立場から高く評価したい」と、賛同していただきました。2011年2月の書文協発足以来、顧問をお願いしています。

―改めて、書写・書道についてのお考えを

野口
話し言葉と違い、書き言葉は不易・不変の部分が多く、とても大事です。また日本人は書道を通して人間形成してきた部分が多いのではないでしょうか。
しかし、書写は学校教育の中で十分とり組めない現実もいなめません。

― 小・中学校の書写は独立教科にするぐらいの施策が欲しいという意見はどう思われますか?英語はいらないから、と。

野口
そう、独立教科にするぐらい。ただし、英語の勉強の充実に関して、私は消極的だが賛成です。

週に1回はオンライン勉強会

今回、インタビューをして驚いたのは、野口先生がオンラインを通じた勉強会をほぼ毎週1度、開催していること。この人模様のための電話インタビューは6月1日に行われましたが、その直前も5月28日には「木更津技法研 修養・道徳5月例会」がオンラインで開かれ、5月30日には授業道場野口塾in野口家(オンライン野口塾)が終日開かれました。オンラインは先生のご自宅と会場を結んで行われます。

― ズームを使われる、と言うことですが、ご自分で設定されるのですか。

野口
いや、僕はよく分からないので、若い先生が数人、家に来てくれて用意してくれています。

― 昨年8月に、先生のお宅の敷地内の有る糠田観音堂と沖縄県石垣島を結んだオンライン道徳研究会(公益財団法人モラロジー道徳教育財団主催、文科省・沖縄県教委・石垣市教委後援)が開かれましたね。そのとき先生方ら77人も参加者がこられたとか。これがオンライン勉強会の最初ですか。

野口
いや、モラロジーさんとしては最初のようですが、すでにオンライン勉強会は開いていました。便利です。

出版した本は約100冊

――勉強会だけでなく、先生はずいぶん多くの本を出版されていますね。

野口
全部で100冊ぐらいかな。いまも2冊書くのを抱えているのですが、若いころのように体力が続かなくて。

写真は、「利他の教育実践哲学―魂の教師塾」(2010年7月、小学館から)。利己の対語である利他は野口先生の教育観の根底をなしています。「人がこの世を去りゆく時、手に入れたものはすべて失い、与えたものだけが残る」。これは野口先生がよく口にされる「師道」の根本をなす言葉と思われます。

野口先生プロフィール(ウイキペディアなどから引用)

野口 芳宏(のぐち よしひろ、1936年2月17日)は、日本の教育者。国語や道徳の「授業名人」と称され、「模擬授業」の名付け親としても著名。
千葉大教育学部卒、同学部附属小学校教諭などを経て、北海道教育大学教授。退官後、植草大学発達教育学部教授、千葉県教育員を6年間務めた。
専門分野は、国語教育、道徳教育、家庭教育、幼児教育。現在、植草学園大学 発達教育学部名誉教授、日本教育技術学会名誉会長、日本言語技術教育学会理事、(公財)モラロジー研究所教育者講師。幼年国語教育会名誉会員。NHK「わくわく授業」出演

(注)この人模様の写真は、石垣島と結んだ時の講義姿を、野口塾群馬事務局発行の
【最新】野口先生御登壇情報 (ameblo.jp)
掲載のものを、ご本人、事務局の了承を得て掲載しました。(終わり)

―改めて、書写・書道についてのお考えを

野口
話し言葉と違い、書き言葉は不易・不変の部分が多く、とても大事です。また日本人は書道を通して人間形成してきた部分が多いのではないでしょうか。
しかし、書写は学校教育の中で十分とり組めない現実もいなめません。

― 小・中学校の書写は独立教科にするぐらいの施策が欲しいという意見はどう思われますか?英語はいらないから、と。

野口
そう、独立教科にするぐらい。ただし、英語の勉強の充実に関して、私は消極的だが賛成です。

週に1回はオンライン勉強会

今回、インタビューをして驚いたのは、野口先生がオンラインを通じた勉強会をほぼ毎週1度、開催していること。この人模様のための電話インタビューは6月1日に行われましたが、その直前も5月28日には「木更津技法研 修養・道徳5月例会」がオンラインで開かれ、5月30日には授業道場野口塾in野口家(オンライン野口塾)が終日開かれました。オンラインは先生のご自宅と会場を結んで行われます。

― ズームを使われる、と言うことですが、ご自分で設定されるのですか。

野口
いや、僕はよく分からないので、若い先生が数人、家に来てくれて用意してくれています。

― 昨年8月に、先生のお宅の敷地内の有る糠田観音堂と沖縄県石垣島を結んだオンライン道徳研究会(公益財団法人モラロジー道徳教育財団主催、文科省・沖縄県教委・石垣市教委後援)が開かれましたね。そのとき先生方ら77人も参加者がこられたとか。これがオンライン勉強会の最初ですか。

野口
いや、モラロジーさんとしては最初のようですが、すでにオンライン勉強会は開いていました。便利です。

出版した本は約100冊

――勉強会だけでなく、先生はずいぶん多くの本を出版されていますね。

野口
全部で100冊ぐらいかな。いまも2冊書くのを抱えているのですが、若いころのように体力が続かなくて。