~日本書字文化協会機関紙 No102~
令和5年(2023年)2月号

◆ご挨拶「こころ」会長・大平 恵理
◆専修学院生全国募集
◆第1回「書検」の紹介YouTube公開
◆復活!東・西・南・北
◆第11回伝統文化大会結果
◆  〃  中央審査委員長審査講評
◆  〃  受賞コメント
◆第8回臨書展開催

 

一般社団法人日本書字文化協会(書文協)
本部 〒164-0001 東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階
電話03-6304-8212 / FAX03-6304-8213
Eメールinfo@syobunkyo.org ホームページhttps://www.syobunkyo.org

ご 挨 拶

一般社団法人・日本書字文化協会
代表理事・会長 大平 恵理

こころ

 創設14年目、公共性高く進みます

一般社団法人日本書字文化協会が設立されて14年目に入りました。本日2月22日が設立日です。たくさんの方々に支えられ今日を迎えることができました。この場をおかりして、深く感謝申し上げる次第です。

これまでもこれからも一番に念頭に置いているのは公共性です。私ごとですが、書写書道に触れてきた道を振り返ると、年長の頃から書写を習い始め、継続して学ぶようになったのは小学2年生からで、現在は検定や全国コンクールなどに参加する側から主催する側にもなりました。参加者がいて、参加者を支える家族がいて、指導者(検定・コンクールなどの主催者も含めて)がいて、学びはこの3者がいて成り立ちます。その大切さは常日頃から痛感するところです。
時に賞などの結果にこだわり過ぎ、ともするとせっかくの学びの豊かさに影を差しているのではないかと感じることもあります。それは私たちが目指す公共性と逆行しているのではないかと。

書写書道の学びに限らないことですが、やはり私たちの活動が公共に返っているのか、と時折問い質します。それは何か?これまでも、これからも「手書きの魅力」が一番の命題で、「美しい日本語の継承と発展の一翼を担う」ことが書文協の理念の一つです。また、附属書写書道専修学院の学科構成・カリキュラムなどを一新し、その上で全国募集(特別地域を除く)に踏み切りましたが、そのリニューアル専修学院の理念にも公共性の保持を掲げました。

専修学院改革について詳しくは、この機関紙の記事をお読みください。

書文協では全日本書字検定試験『書検』の実施、書写書道専修学院のリニューアルスタート、成績証明書の整備など、これまでの検定・ライセンスの充実、全国コンクールの発展的開催、硬筆・毛筆テキストの整備等に加えて進めてまいります。
世界では平和が危ぶまれ、あるいは自然災害に見舞われている地域があります。その困難に遭遇されている方々にお見舞い申し上げるとともに、私たちが日本にいてできること、担える仕事を大切にしてこれからも進んでまいりたいと存じます。

 

 

専修学院改革と全国募集
実2-4月、春季特別募集

書文協は附属書写書道専修学院(中野、多摩、川崎3校)の構成を大幅改革し、オンライン指導を取り入れ全国募集することとなりました(特別地域は除く)。2月、3月、4月を春季特別募集とし、入学金半額、推薦者にも薄謝を進呈します。学科構成、カリキュラムを整備、成績証明書の発行など学ぶ魅力を倍増しました。お知り合いにもぜひ紹介お願いします。

特別地区は書文協関連の書塾がある近辺です。主に隣接群市。ただし、指導者養成科は所属団体の推薦があれば特別地域からの入学を認めます。文章表現講座に特別地域はありません。
学び方は対面とオンライン、その併用の3パターンがあります。オンライン指導は近年のITの普及が可能にしました。政府は目下、生徒が各一台端末を持つ「ギガスクール構想」を進めていますが、オンライン書写書道指導は、同構想にも適うものです。

 

リニューアル専修学院

 

1.理念

美しい日本語の継承と発展の一翼を担うことを目指し、言葉・表現の力を養うことに配慮した書写書道の指導を行う。手書きの意義を追求し、個性的な一人ひとりの
良さが生きる書字活動の営みを育むことに尽力すると共に、指導者の育成を図る。
賞取り合戦につながるような指導に陥らないこと、またそれによる勝利至上主義となるような指導は行わない。

 

2.構成
<常設>

◆初等科
書字の基礎基本を習得する
・検定硬筆・毛筆検定共に3級(毛筆3級=66点)
・ライセンスえんぴつ指導者初級(対象:小5以上)
・毛筆指導者新級

◆中等科
・書字の応用力をつける
・検定硬筆・毛筆検定共に4段(毛筆4段=186点)
・ライセンスえんぴつ指導者中級
・硬筆指導者初級
・毛筆指導者初級

◆高等科
・書字の専門性を高める
・検定硬筆・毛筆検定共に8段(毛筆8段=338点)
・ライセンスえんぴつ指導者上級
・硬筆指導者中級、上級
・毛筆指導者中級、上級

◆指導者養成科
・書字の基礎基本と応用力を付けると共に、指導者として専門性も高める。
・検定硬筆・毛筆検定共に10段
(当面毛筆のみ9段=386点、且つ120課題A合格終了)
・ライセンスえんぴつ指導者秀級
・硬筆指導者師範
・毛筆指導者師範

◆カルチャーコース
行書、草書、漢字かな交じり文連綿、細字百人一首から選択。

<特設>
文章表現講座

4クラス構成。書写書道は言葉と密接な学びであるため、語彙力、思考力、表現力を高めることを目的に、書文協附属書写書
道専修学院に文章表現講座を設置するもの。どのクラスも指導者ライセンス試験の感想文課題の対応指導も併せて行う。学力アップにも直結する講座である。
・初級クラス 日記
・中級クラス 手紙
・上級クラス 随筆
・秀級クラス 論文

◆書写書道特別講習会
ご案内は別途。春・夏・冬期に行う予定。

 

3.成績証明書の発行(有償)

日本書字文化協会が発行する成績証明書を利用することができる。専修学院の学びで取り組んだ日本書字文化協会が実施する検定、指導者ライセンス、大会受賞歴は
全て保管されており、その記録が成績証明書となる。就職や受験など希望すれば随時申し込むことができる(発行には通常2週間ほど要する)。

 

4.日本書字文化協会の会員

書文協専修学院生は同時に、一般社団法人日本書字文化協会の会員となる。会費1か月600円は、月謝に含まれる。

 

5.使用する教材・教具

全て書文協が指定する。主に書文協が制作したテキストを使用。

<書写書道テキスト・文字の一例>

6.募集対象と受講料及び入学金(消費税別途)

1)入学金 5,000円
2)受講料(月謝)

<常設>
◆初等科
幼児~学生 6,000円
一般 7,000円

◆中等科
幼児~学生 6,500円
一般 7,500円

◆高等科
幼児~学生 7,000円
一般 8,000円

◆指導者養成科
高校生 8,500円
大学・一般 10,000円

◆カルチャ―コース
一般    8,000円

<特設> 
文章表現講座
初級クラス=3,000円
中級クラス=4,000円
上級クラス=5,000円
秀級クラス=6,000円
※常設の科・コースと同時に学ぶ場合は一律1,000円とする。

書写書道特別講習会
参加費は月謝に含まれません。別途案内を参照。開催の際、初・中・高等科生は2~8コマの参加を推奨。
※受講料に、検定受験料、大会出品料等、カリキュラム中の主な参加費を含む。
※授業料の割引制度あり。家族割とシニア割の2種。それぞれ1人に対して500円の割引(消費税加算後)。但し、2つの割引の併用はなし。

7.進級と在籍の変更

<常設の科・コース>
12か月×月3回、で授業を構成し、原則として上級クラスへの進級、及びコース内容の変更は年度末とする。

<特設の文章表現講座>
いずれもオンラインで、二ヶ月を1単位とする課題を設定。最初を奇数月とし、同月15日までに指定課題について作文提出、同月末日までに添削返信。次月の偶数20日までに書き直した作文を提出、同月末日までに添削と次回課題を送信。

<特設の特別講習会>
開催の都度募集を行い、申込期間を定める。

8.授業参加形態

全ての常設の科・コースは、対面とオンライン併用のハイブリッド授業に対応する。また、オンラインのみの受講も可とする。オンラインを活用した受講は、授業参加型と個別指導型がある。文章表現講座は全てオンラインで行う。特別講習会についてはその都度案内を行う。

<オンラインによる授業参加型>
授業参加型は次項で説明する3校の時間割に沿って対面授業に参加する形で行う。

<オンラインによる個別指導型>
予め設けられた時間を申し出てオンラインで指導を受ける。事前に作品を提出する時は、受講日時の前日18時までに送信する。

9.設置校

<中野校>
東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル301号室

<多摩校>
東京都羽村市川崎 JR羽村駅徒歩5分

<川崎校>
神奈川県川崎市中原区 川崎総合自治会館

※上記3校は全科・コースがある。対面授業を行い、ハイブリッド授業にも対応。
上記3校以外の地域ではオンライン授業のみで、国の内外を問わず受講可能。
大阪、福岡、仙台等の各都市では、春・夏・冬の長期休暇を活用した対面授業やスクーリングを検討中。
※地域により受講できる科・コースは限定する。書文協会員教場がある地域は会員教場への通塾を推奨。会員教場の周辺地域では、原則として指導者養成科、文章表現講座のみとする。

10.<中野校>の授業の時間数とコマ

1)時間数とコマ
平日在籍=1週につき1コマで1か月に3回      1コマ60分
日曜在籍=1日に3コマ(午前または午後)で1か月に1回  〃

11.指導陣

書写書道専修学院
院長・中野校校長 大平恵理
多摩校校長   渡邉啓子
川崎校校長   池田圭子
文章表現講座主任講師 谷口泰三(元毎日新聞紙面審査委員)
他、書文協本部講師等

12.年間授業予定(あらかじめ連絡の上、予定が変更となる場合有)

4月 検定
5月 書検
6月 ひらがな・かきかたコンクール、検定、指導者ライセンス、段級位特別認定試験
7月 硬筆コンクール
8月 学生展(学生)、作品創り(一般)
9月 検定
10月 検定、指導者ライセンス、段級位特別認定試験
11月 年賀はがきコンクール
12月 学生書き初め展覧会(学生) 、作品創り(一般)
1月 検定
2月 検定、段級位特別認定試験
3月 臨書展

13.授業の振り替えなどについて

都合で授業に参加できない時は、予め連絡の上、授業を振り替えることが可能。
※1天候などの事象により各校教場での対面指導に困難が生じた場合、オンライン指導や他の日時のコマに振り替えて授業を行う場合がある。その際は書文協からできる限り速やかにお知らせをする。
※2専修学院のやむを得ない事情で授業の実施が困難となった場合にも※1と同じ措置をとることがある。

14.入学手続き方法

各校の入学願書をご提出ください。入学願書は、書文協ホームページのメニュー「ダウンロード」の「書類ダウンロード」d群にある申込書をプリントアウトするか、書文協事務局より取り寄せていただき、必要事項をご記入の上、持参または、書文協本部に郵送。

15.入学金・受講料の納入方法

入学金、受講料、教材費等、全てゆうちょ銀行口座からの一括引落し。入学願書のご提出後、または書文協本部への電話及びメールでのご連絡で、ゆうちょ銀行自動振込利用申込書をお渡しするか書文協から送付。お手元に届いたら、ゆうちょ銀行にて手続きを行ってください。引落し日は毎月1日(1日が土日祝祭日の場合はその翌日)に当月分のお引き落とし。手続きが間に合わない場合は、翌月に合算しての引落しとなるります。

16.休・退会

休・退会希望の前月10日までに文書で申し出る。所定の書式はないため、届出文書には、在籍する科、コース、または講座(3校の授業参加者は在籍校も)、氏名、保護者氏名(20歳未満のみ)、希望月、理由、申し出の年月日を明記。
休会は進学準備または病気治療・療養の事由のみとし、期間は最長1年とする。なお、休学期間は書文協会費1か月600円のみを納める。
※一度納入された費用は原則として返金されません。手続きに遅れがないようご注意ください。

17.書写書道専修学院からの連絡

専修学院事務局から一斉メールにてご連絡する場合があるため、ドメイン名「syobunkyo.org」からのメールを受け取り可能に設定してください。また、メールアドレスを変更した場合、新しいアドレスを必ずお届けください。

18.書写書道専修学院事務局

一般社団法人日本書字文化協会本部 事務局
〒164-0001 東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階
電話:03-6304-8212(平日10:00~17:00)
FAX:03-6304-8213 Email:info@syobunkyo.org
ホームページ:https://www.syobunkyo.org

 

書検紹介YouTubeを開設

一般社団法人日本書字文化協会は、書検(全日本書字検定試験)の第 1 回を、今年6 月に実施予定です。自分に書写書道の 知識や技術が身に付いているかを調べるものです。字の上手、下手で段級を付与するもの ではありません。書道を生涯学習にし、文字文化を発展させるために全国で初めて実施されます。皆さん、 ぜひ参加してください。この書検を紹介するユーチューブ書検を解説しました。以下のURLからご覧ください。

https://youtube.com/@user-yd4wk4eb2k

主催:一般社団 法人日本書字文化協会、
後援:公益財団法人文字・活字文化推進機構
実施要項は書文協ホームページ https://syobunkyo.org でご覧ください。 「書検」という題字が入ったバナーから見られます。

新年度に詳細発表予定

テストは、幼稚園児から小学・中学・高校・大学・一般まで 20 段階に分けて行います。 その学年までに体得していて欲しい書写書道の基礎知識や実技について、硬筆、毛筆の両 方について検定するものです。例えば、書く時の「止め、はね、払い」についてどこまで 知っているか、実際に書けるか、などを調べるものです。毎年 6 月実施の予定で、前学年の学びの振り返りとなります。不合格の人には追試験の機会を設けます。このYouTubeは、動画撮影・画像処理のプロ集団「チーム海援隊」に制作していただきました。書写書道の世界の楽しさが盛り込まれています。バックグラウンドミュージックに乗せた楽しい1分15秒です。ぜひご覧ください。ご質問は書文協事務局(電話03-6304-8212、FAX03-6304-8213、E-mail info@syobunkyo.org)まで。

東 西 南 北

書が売れた!

書文協会員である堀口玲子先生から「貴太(たかひろ)の書が売れたんです」と電話がありました。貴太君(28)は、この原稿の筆者(谷口)が書文協で開く「作文教室」の生徒でした。書はお母さんの堀口先生に習っているのは知っていましたが、一般生徒の書作品が売れたという話は聞いたことがありません。
買ったのは、一般社団法人・地域公益推進機構(埼玉県和光市)の代表理事,小倉順子さん。同機構が昨年、埼玉県川越市の市制100周年記念事業として障害児者と家族を応援する『き・ら・め・く・アート プロジェクト』を7,11月の2回開催した際、貴太君が当時所属していた障害の子供たちの芸術グループ「ミラクル」が出品していたのです。
「戦」と書かれた作品は半切の半分ほどの用紙に、メタリックブルーという書道液で行書で書かれた、ひと際目立つ作品でした。
希望する人は売値を書いて良いことになっていました。
それで貴太君が2万5千円と書き、小倉さんが額縁共に3万円で購入したのでしたが、小倉さんの買った動機が胸を打ちました。
貴太君は小倉さんたちに涙ながらに語りました。「戦いと言うより闘いという気持ちで書きました」。「障害に負けないぞ」と、闘う気持ち。小倉さんはこの気持ちをビリリと感じ「私の人生も闘いだったわ」と心を動かされたのでした。
書は自己表現であり、(人に見てもらう)作品化を大事にしよう、という書文協の理念を絵にかいたようなストーリーです。書文協は1月7,8日に中野もみじ山文化センターで作品展示会を開催し、大盛況でした。今度開催する時は、希望者には売却価格を付けさせようと、先生方に提案してみようと考えています。

作品をはさみ左が貴大君、右が小倉さん

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
編集部から
しばらく休載していた「東・西・南・北」を再スタートします。全国各地の話題を紹介します。自薦他薦を問いません。ご自分で書いても、編集部への取材要請でも構いません。どんどんお知らせください。

 

第11回全国書写書道伝統文化大会

出品数は7929点

第11回全国書写書道大会伝統文化大会は予定通り1月20日、締め切られました。多くの書塾指導者がコロナに感染する異常事態でしたが、硬筆の全国年賀はがきコンクール6256点(前回6961点)、毛筆の全国学生書き初め展覧会1673点(同2422点)が集まりました。合計点数は7929点(前回9383点)でした。
指導者の感染だけでなく、多くの書塾が公共施設を練習会場にしていますが、施設がコロナワクチン接種会場等として貸し出し中止となり「練習ができない」との悲鳴が各地で上がりました。しかし、多くの教場がそれを乗り越えて練習を確保し、出品にこぎつけられました。各団体の先生そして出品者の皆様に心から敬意を表します。

異常事態を乗り越えて作品審査会

審査会は今回も、写真判定でなく現物を審査する、ことを最優先に加藤東陽・書文協中央審査委員長単独の臨席により1月27日、東京都中野区内で実施しました。上記の異常事態に見舞われた各団体でしたが「レベルは落ちていない。指導の手が行き届いている」と加藤委員長は述べられました。政府のウイズコロナ政策により、行動制限は大幅に緩和されましたが、習いごとの書写書道の世界には厳しい状況がなお続きます。
各教場には一層のご努力を期待します。

 

硬筆審査風景

毛筆審査風景

2月末から成績発表・顕彰依頼へ

各団体・個人の成績発表は、2月下旬から、賞状・賞品の発送をもって行います。また恒例の学校・地教委への優秀者の顕彰依頼も同時に行います。学校への顕彰依頼は、教育特別奨励賞を除く特別賞、地教委には大賞以上の受賞者についての顕彰を依頼します。
コンクールは賞取り合戦ではなく、覇権主義は廃す、のが書文協の理念ですが、努力した成果にたいするお褒めの言葉はもらおう、と考えています。多くの学校・教委から賛同の言葉をいただいています。

 

加藤東陽・審査委員長の講評

氏名・学年等も本文同様丁寧に

作品を書く際、課題の文字には意識が行きやすいですが、学年・氏名の書き方や大きさ、更に硬筆の場合は句読点やかぎかっこの書き方も大切です。小中学生が作品に学年や氏名を書くことも含め、特に高校生以上では「落款が変わると作品が変わる」という言葉があるように、課題の文言だけでなく、氏名は作品の一部と考え、本文と一体になるよう、丁寧に書くようにして欲しいと思います。

リズム感を大切に

行書での点画の連続は、点画から点画へどこもつなげて連続する線を書くと、読みづらく、リズムも単調になってしまいます。行書の大きな魅力の一つである、せっかくのリズム感が損なわれてしまうのです。例えば「三」でしたら、1画目から2画目はまだ連続はせずに呼吸を調え、2画目から3画目へ連続する線で表現し、楷書の時よりも少しスピードを上げて書く、といった具合が良いです。

文字の空間や字間、行間の余白を効果的に

線を一筆一筆書き進めると、同時に線と、線の間に空間を作り出します。書くときはこの空間も意識すると良いです。線と線が詰まり過ぎると窮屈な感じになりますね。また、空間の取り方は、線と線の間ばかりでなく、文字と文字の間(字間)もあれば、行と行の間(行間)もあります。特に高校生以上の作品は行を寄せたり、文字の大小や字形に変化をつけたりして、余白を効果的に作ると作品全体にリズム感・趣が生まれてきます。ぜひやってみてください。

「書道」手本はあくまで参考例

「書写」では、お手本は効率よく効果的な学びをもたらしてくれますが、一方「書道」ではお手本通りに書くことが最終の目的になったりすると、かえって学びを縛る弊害も生じます。お手本はあくまでも基準とする文字=参考例と考えましょう。手本を見ながら、点画の長短や方向、空きの特徴を読み取り、その後自分はどう書くか、手本を参考にして独自の作品にしていく、という姿勢を持つことが大切です。手本に縛られているうちは単に紙の上に文字を置いているようであり、窮屈さがあり、作品全体が硬い印象になります。一方、手本から学んだ書き方を生かし、言葉を自分のリズムで書こうという意識を持って書いていくと、瞬間瞬間、一筆一筆に自分なりの動きが生まれ、自然と作品に柔らかさが出てきます。こんなことを念頭に自分らしさを生かした作品作りに取り組んでいくことが、書写書道の学びで一番大切なことと言えますね。

 

 

第11回伝統文化大会

受賞コメント集

同大会での文部科学大臣賞・名誉大賞・大賞を受賞した10人の方々に受賞の思いを聞きました。行数調整のため驚き・感謝の部分は削るなど編集の手を入れました。見出しもおおむね編集部が付けました。文責は編集部にあります。コメント全文は後ほど、作品と共に書文協ホームページに掲載されます。メニューの「結果発表・優秀作品」欄をご覧ください。

 

【総合の部】

<文部科学大臣賞>
高橋 俊介(埼玉県・県立桶川高3年)
最後まで止めず、書き上げる
書道は、二度と同じものは書けず、その時の偶然性、感情に左右されるものだと私は考えています。そのため、作品を書く際はいっときの成功というものを逃さないように、集中力を高めるようにしています。一度作品を書き始めたら、書き直すことができません。書いている途中で気になるところがあっても、最後まで書き上げるようにしています。なぜなら、その作品の全体を見た時に気になっていたところが、調和され良い作品になることもあるからです。
また、上手に書こうという意識によって、体が思うように動かず、流れのない線になってしまうので、自分自身が楽しみながら自然な作品を制作するように心がけています。

 

<伝統文化名誉大賞>
関口 美夢(東京都・青梅市立第二中2年)
葛藤
私は恵まれています。世界で紛争や災害が起きている中、寝て起きれば朝が来て、食事をし学校へ通う。部活や習い事もでき、落ち着いて文字を書く時間ももてます。
だけど今回は特に部活との調整で迷いました。バレーボール部の部長をしていますが、その部長が練習等を休むことや年明け最初の練習日に顧問と友達が必勝祈願に行くこと。顧問が年始めで産休に入るので一緒にできるのはあと数日などで悩みました。
相談した書道の先生や家族からは、自分の取り組んできたものも大切にするようアドバイスしてもらいました。そして顧問からも応援されたことで、気持ちに応えたいとも思い、今回も書道を頑張りました。

 

【全国年賀はがきコンクール】

<文部科学大臣賞>
菊池 咲空(愛媛県・神郷幼稚園年長男子)
がんばってかいたよ
いちばんの賞がとれてとてもうれしかったです。たくさんの人が「すごいね」と言ってくれました。
「と」がいちばんむずかしかったです。また一ばんになれるようにがんばります。

<文部科学大臣賞>
稲葉みず希(埼玉県・和光市立新倉小2年)
練習の成果がでた
年少のころからずっと習い事や家で字のれん習をしてきたので、そのせいかが出せたのかな、と思いました。字を習いはじめる時に母から、うつくしい字をたくさん目にすることが大切と言われていたので、お手本をよく見てどんな形か、線の長さや、向きを気にしながらていねいに書くということを心がけました。とくにむずかしかったのは、字の大きさをそろえることです。さらに入ひつの力の入れ方にも気をつけて書くようにしてみたら、今までの字よりもぐっとうつくしく見えるようになりました。

<文部科学大臣賞>
藤巻 結愛(神奈川県・森村学園初等部6年)
自分の手できれいな文字を
1年生の時、祖母に「字は心の表れよ。」と言われてから、私は綺麗な文字を書くことを心がけてきました。集中できない時に字を書いても上手く書けません。だから、私は日頃から落ち着いて丁寧に書くことを意識しています。コンクールに出す作品だけではなく、授業のノートなども後で見返しやすいように、画数が多い字も一画一画をしっかり書くようにしています。また、私は、文字や文章を書く時はそれぞれの字の形と、周りの字とのバランスがとても大事だと思っています。
今はコンピュータの時代で、紙に文字を書くことが少なくなっていますが、これからも自分の手で丁寧に綺麗な字を書いていけるように頑張りたいです。

<文部科学大臣賞>
鈴木 里奈(大阪府・吹田市立第二中2年)
7年間の努力が実った
全ての文字の中心がずれないよう真っ直ぐに書くことが、自分にとって大きな課題でした。自分の癖を抑え、お手本と自分の文字を細かく見ながら、少しずつ修正して書き上げました。最後の最後まで粘って書いた一枚です。
私は小学1年生の冬からお習字を始めました。この7年間の努力が実って本当に良かったと感じました。そして、丁寧に教えてくださった先生や応援し支えてくれている家族な、たくさんの方の存在があってのことだと思います。本当に感謝してもしきれません。

< 大 賞 >
浅野 愛奈(神奈川県・日本大学高2年)
続けることの大切さ
書道は幼稚園から始めましたが、中学に入り、塾や部活など自分で上手くスケジュールを調節できず、書道をやらない時期が続きました。しかし、親から「続けてみなさい」と言われ、再開することに決めました。
やはり、やらなかった分、自分の指の動かなさや、周りとの差を感じ、再度挫折しそうになりましたが、先生が丁寧に教えてくださること、両親の応援がそんな自分を奮い立たせてくれました。そして、続けていくうちに、コンクールの賞を段々と頂けるようになったことで、続けていることの誇らしさを感じることが出来ました。今では、書道は私を形づくる一つとなっています。

 

【全国学生書き初め展覧会】

<文部科学大臣賞>
戸邉 奏太(千葉県・船橋市立高根台第二小6年)
結果は後からついてくる
僕が書道を始めたのは、小学校一年生の時でした。一年生のときに知り合った友達の書く文字がとても美しく、僕もこんな字が書けるようになりたいな!と思ったのがきっかけでした。
これまでも、筆づかいができるようになるまで何度も何度も練習したり、ときには悔し涙を流したりもしました。でも、ご指導くださる先生の『結果は後からついてくる』というお言葉を胸に、いつも自分を奮い立たせてきました。うまくできないときも悔しい結果のときにも、『練習やこれまでの努力に、何一つ無駄なものはないよ。』と、先生からのお言葉で、いつも前を向くことができました。

<文部科学大臣賞>
新納 愛梨(東京都・城西大附属城西中3年)
ずっと願ってきた
私は兄の影響を受け4歳から書道教室に通っています。小学3年生の時に、いつかは文部科学大臣賞を取れるように上手くなろうね、と母に言われたことから文部科学大臣賞を取ることが私の目標になりました。
大会に参加する機会があり、色々な賞を頂きましたが自分の目標とする賞を受賞することが出来ず、落ち込むこともありました、でも自分の特技はなんだろうと考えた時、小さい頃から色々な方から字が綺麗だね、と褒めていただいた書道をもっと上手く書けるように練習しようと思いました。
中学校では書道部に入り、部員1人になった今も色々な書体の練習をして頑張っています。

< 大 賞 >
廣田 梅太郎(岡山県・明誠学院高2年)
これからの励みに
受賞した作品は、三蹟の一人である小野道風が書いたとされる「本阿弥切」を基調に創作したものです。本阿弥切の特徴は、コロコロとした小さな文字をテンポの良い筆線で律動的に表現しているところにあると思います。
高校入学して間もなく勉強を始めた仮名の創作ですが、穂先の太い筆を使い細い線を出すことは難しく、未だに苦労しております。そんな中、このような賞をいただけたのは、これからの制作への励みとなりました。
熱心にご指導してくださる先生方、ともに切磋琢磨し合う仲間たち、そして家族の支えがあったから受賞できました。制作に励みたいと思います。

 

リニューアル臨書展

臨書はカリクラム上では高校書道で学びますが、書文協の臨書展は低学年でも臨書に親しみを持てる工夫をしてあります。ぺージの都合で抜粋ですが、以下の実施要項をお読みください(実施要項全文は近くホームページに掲載されます)。
実施要項にもあります通り、今回から優秀作品は中国・南京市で夏に開かれる国際展での掲示されることになりました。異文化交流の面がより強まりました。国際展は中国政府の教育部門が主催するもので近く詳細が決まります。当臨書展はこれに合せ従来の年度末行事の位置づけ、4月20日締め切りとしました。新学年での応募となります。皆さん、奮って出品お願いします。

第8回臨書展実施要項

臨書とは、大まかに言えば、書の古典を模写することを言います。書道を学ぶ上で、書く技術を高めるためのとても大事な学びとされています。高校書道科のカリキュラムでは、臨書が重視されているのがわかります。また、古典の多くは中国の優れた書作品です。国際化時代の異文化理解の手始めとして、漢字同文の隣国の文化を知ることはとても意義があります。もちろん日本の古典臨書作品も大歓迎です。
こうした目的から、書文協は早いうちから臨書に親しめるように工夫した臨書展を開催、今年度で8回目となりました。

優秀作は中国・南京での国際展に出品

今回は、7月20日から、中国南京市の南京科挙博物館で開かれる国際展「第一回青少年世界平和書法大会」(主催・国際芸術家連盟、中国児童文学芸術促進会)に優秀作品を出品します。主に臨書の部から選びますが、楷書書写の部でも特に優秀な作品があれば出品を検討します。南京での展示作品は秋に東京美術館で開催の展示会にも飾られるかもしれません。南京への出品は無料ですが、郵送料を一部負担していただく場合がありますので、あらかじめご了承ください。皆さん、楽しみに出品しましょう。

 

1.主催 
一般社団法人日本書字文化協会

2.後援(予定)
青梅市、中華人民共和国駐日本国大使館文化部、東京都青梅市日本中国友好協会、中国書法学院、国際芸術家連盟、NPO法人日中友好交流促進会蘇州・寒山寺、蘇州呉昌碩研究会

3.大会役員 
実行委員長  渡邉啓子
副実行委員長 池田圭子

4.審査員
加藤東陽(書文協中央審査委員長、東京学芸大学名誉教授)
加藤堆繋(同委員会委員、東京学芸大学教授、前文部科学省教科調査官)
豊口和士 (文教大学教授、文部科学省教科調査官)
大平恵理(日本書字文化協会会長)

5.作品〆切 
令和5年4月20日(水)必着

6.賞
大賞(臨書の部1・2から)、中華人民共和国駐日本国大使館文化部賞、中央審査委員会賞、日本書字文化協会会長賞、青梅市日中友好協会会長賞、日中文化交流促進会理事長賞
優秀賞、本賞(特選、金・銀・銅賞)

7.展示会 
令和5年6月2日から数日間、青梅市の澤乃井ガーデンギャラリーで開催します。入場無料。

8.応募資格
全部門とも年齢不問

9.募集部門
<臨書の部>  
用紙は半切、八ッ切、半紙
・自由課題(高校書道教科書ⅠⅡⅢを基準とする。中国・日本古典共に。2文字以上。)
・常設課題(漢詩・楓橋夜泊)の1句以上
1句中の四文字、三文字でも可
漢詩「楓橋夜泊」
月 落 烏 啼 霜 満 天 江 楓 漁 火 對 愁 眠
姑 蘇 城 外 寒 山 寺 夜 半 鐘 声 到 客 船

<楷書書写の部>
下記から選ぶ。用紙は半紙、八ッ切
・1字:月 満 天 漁 火 城 外 の中から1文字
・2字:漁火
・3字:寒山寺

※用紙はいずれも縦長、縦書き使用。落款は、落款印のみは不可。

10.手本  
指定課題の部は漢詩・楓橋夜泊の拓本をA3判に複写したものを、楷書書写の部の手本(大平恵理揮毫)はA4判で計9枚。手本はいずれも1枚当たりA4判107円、A3判214円(税別)。希望者は送料520円を加えた相当額分の切手を添えて、書文協本部臨書展係りに申し込んでください。

11.出品方法 
①作品に出品票を貼付する(出品票には※出品券を貼付)
※出品券=下記に説明があります。
②応募総括用紙(振込受領書を貼付)、応募明細用紙を同封し送付
※臨書展はこれまで年度末行事としていましたが、その枠から外します。
 出品時の学年は令和5年度の新学年を書いてください。
※応募書類は書文協ホームからダウンロードできます。<個人別事前参加登録用紙><応募総括用紙><応募明細用紙><出品票>があり、説明文書として<事前参加登録制について>がそれぞれ書文協ホームページにアップされています。
書文協ホームページのフロントページ上部にあるメニュー欄の1列目、右端にある「ダウンロード」にカーソルを当てると、詳細項目がプルダウン表示されます。その最初「書類ダウンロード」に様々な書類49項目のダウンロードがリンクされています。その中から大会関係を選んでダウンロードし、ご利用ください。また、書文協に直接申し込んでいただくこともできます。
※書文協では全国書字検定試験、ライセンス試験、全国書写書道大会、講習会等における事前参加登録制を実施しています。
参加予定者には個人別事前参加登録用紙を提出することで出品券が発行されます。
応募の際は、応募総括用紙、応募明細用紙を作品(必ず出品券を貼付)に必ず添えてください。出品券の貼付は、出品票の所定欄となります。出品票はダウンロードもできます。

12.出品料 
臨書の部は1点1,000円(幼児・小中学生は700円)
楷書書写の部 同900円(幼児・小中学生は600円)
個人出品は一律1点1,500円
※いずれも消費税別
※出品・参加は誰でもできますが、書文協会員の場合は会員割引があります。出品における事務作業等の費用として行われるものです。書文協会員規則により、団体会員Aは5%、団体会員Bは10%、団体会員Cは15%が割り引かれます。会員制度の詳細はお問い合わせ下さい。団体審査(一審)を行った場合は出品料からさらに5%引かれます。出品にあたり、割引は学校、団体会員のみとなります。

13.振込先  
ゆうちょ銀行
名義 一般社団法人日本書字文化協会
=振込用紙にてお振込みの場合=
記号 00130-1-728113
=上記以外からお振込みの場合=
店名 〇一九(ゼロイチキュウ)
口座番号 当座 0728113

14.作品提出先 
〒164-0001
東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階
書文協本部
電話 03-6304-8212
FAX  03-6304-8213
E-mail info@syobunkyo.org
書文協ホームページ https://www.syobunkyo.org