~日本書字文化協会機関紙 No110~
令和6年(2024年)6月号

 

◇ご挨拶(会長・大平恵理)
◇総括帖の発行
◇第9回臨書展が盛会に終了
◇第2回『書検』の案内
◇第13回総合大会の課題解説一覧

 

 

一般社団法人日本書字文化協会(書文協)
本部 〒164-0001 東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階
電話03-6304-8212FAX03-6304-8213
Eメールinfo@syobunkyo.org ホームページhttps://www.syobunkyo.org

 

 

 

ご 挨 拶

一般社団法人・日本書字文化協会
代表理事・会長 大平 恵理

書道の国際化を推進

書文協では、東京都美術館で秋に行われる『国際書法芸術展』に昨年の第56回に初めて参加するようになり、今年の第57回展は、より発展的に参加することにいたしました。この国際展の歴史は古く、国際的視点をもった書写書道の学びの場として、また日本を拠点に中国を中心とした文化交流と国際理解の機会づくりとなることを願い、国際書法芸術協会主宰の劉洪友先生の呼びかけによるものです。

『書検』は私たちが永く構想を温めていたものです。書写書道では、評価がとかく上手いかどうかに終始しがちですが、『書検』では何を学んだかが評価され、コンクールと同様、学習指導要領に合わせて内容が組まれています。

書文協の作品は本展示会の中で、博選証(はくせんしょう)として展示されます。博選証は、書文協主催の全国コンクールでの優秀作品、また年間を通じて顕著な学びのあった教場を博選証選考委員会で選出し、そこで学ぶ生徒さんの作品を展示するものです。

会期中に揮毫交流会(きごうこうりゅうかい)や表彰なども行われます。およその内容は下記の通りです。詳細が決まりましたら、書文協ホームページ等でお知らせします。多くの方に上野公園の東京都美術館にお運びいただけましたら幸いです。

 

第57回国際書法芸術展

会期
2024年9月27日(金)~10月5日(土)
開場時間
午前9時30分~午後5時30分
入場は17時まで
※初日は15時開会、最終日は午後2時閉会(入場は午後1時半まで)
※時間は変更することがありますので、来場の際はお確かめください。
会場
東京都美術館 1階第1展示室 (東京都台東区上野公園8-36)
表彰・揮毫交流会(どなたでも参加できます。希望の方は事前にご連絡を)
10月5日(土)正午ごろ開催
※時間が決定しましたらHP等でお知らせします。

 

博選証とは

博(ひろく)選んだ証(あかし)の意味で、博選証選考委員会によって選出された作品のこと

第57回国際書法芸術展における博選証の選考
①過去1年における書文協の全国書写書道大会(総合大会、伝統文化大会、臨書展)での優秀作品
②年間を通じて顕著な学びのあった教場の生徒作品

 

 

~大平恵理の書き文字~
「総括帖」を発行
~50年の足跡~

お陰様で一般社団法人日本書字文化協会は今年15年目に入りました。書写書道に親しむ底辺の拡大を目指し、公共性に適う活動を念頭に立ち上げました。この間、志を同じくするスタッフに恵まれ、たくさんの方々のお力添えのもと今日を迎えることができました。
この節目は、私・大平が書写書道に親しむようになって50年という時でもあり、今回の総括帖刊行の運びとなりました。(大平恵理会長)

 

 

小学4年生での太宰府天満宮奉納展での文部大臣賞、また中学1年生の時の日本武道館席書大会で受賞した文部科学大臣賞を始め、大平恵理が約50年に渡って書き続けてけてきた書写書道作品を集大成しました。「審美にして実用的」という書風、と評価をいただいている多くのファンを持つ大平恵理の作品を一望できます。日本武道館においては当時の受賞者名簿を引用の許諾を下さるご理解をいただきました。

 

価格は6万円

総括帖は和綴じ本4巻(1巻100ページ)にまとめます。1巻ずつ9月から刊行いたします。価格は1シリーズ(4巻)6万円。和綴じの手数なども加わり、それだけの価格を頂きたいと思います。7月から予約受付をします。注文時の前払いです。著作権は大平恵理に有ります。

 

予約の方法

書文協本部の電話、あるいはメールご連絡いただきますと、申込書をご指定により、メールで、あるいは郵送いたします。それに必要事項を書き込み返信ください。同時に、指定の口座にお振込み願います。

 

初めて文部大臣賞を頂いたのは、書写書道を本格的に初めた小学4年生の時です。表彰のため主催の毎日新聞社福岡総局を訪れました。その時の様子と新聞記事です。

 

上記の新聞記事の「毎日」が大平の受賞作。写真は表彰式での大平と、賞状を掲げる大平。

 

予約月から、手書き書をプレゼント

予約申込いただいた方には8月から1年間、毎月肉筆ミニ作品(はがき大)をプレゼントいたします。家庭のちょっとした空間に飾っていただき、生活の中で手書き文字に触れていただけたら幸甚です。この作品のプレゼントは2025年7月で終了いたしますので、ご予約はお早めにいただければと思います。

 

 

 

硬筆、毛筆手本の各種も披露

大平は、大東文化大学在学中から書写書道全国組織で全国大会手本(硬筆・毛筆)を一手に引き受け書いて来ました。2010年2月、公益性の堅持を掲げて一般社団法人日本書字文化協会(書文協)を設立し代表理事・会長に就任。
その後は大会手本だけでなく、練習帳シリーズや毎月の検定手本(硬筆・毛筆)も書きました。また2023年(令和5年度)から始めた書検(全日本書字検定試験)の手本も書いています。書検は字の上手さを競うものでなく、学習指導要領に基づく書写書道の基本的知識・技術を硬筆・毛筆同時に調べるもので、書写書道を生涯学習にするために開始されました。

 

 

 

大平恵理総括帖全4巻スケジュール
第1巻 2024年9月末完成予定

①硬筆手本(書文協検定手本、全国コンクール参考手本など)幼児、小学生用約80点
②大平恵理の軌跡(幼少からの受賞記録・作品など)

 

第2巻 2024年10月末完成

①硬筆手本(書文協検定手本、全国コンクール参考手本など)中学生、高・大・一般用約80点
②大平恵理毛筆作品

第3巻 2024年11月末完成予定

①毛筆条幅手本(書文協検定手本、全国コンクール参考手本など)幼児、小学生用約80点
②大平恵理毛筆作品

 

第4巻 2024年12月末完成予定

①毛筆半紙手本(書文協検定手本、全国コンクール参考手本など)中学生、高・大・一般用約80点
②書文協メンバー友情出品(渡邉啓子、池田圭子、谷口泰三)作品

 

 

 

 

 

第9回臨書展盛会に終わる

優秀作品展示会に多くの見学者

書文協主催の第9回臨書展(外務省など後援、応募総数1261点)は、特別賞6点、優秀賞13点、教育特別奨励賞4点について、恒例の優秀作品展会を5月31、6月1、2日に大日本寒山寺のある東京都青梅市の多摩川渓谷沿い澤乃井ガーデンギャラリー(東京都青梅市沢井 2-770)で開催しました(入場無料)。例年の倍近い人が来られました。

日本の書道について、政府がこのほど国連に無形文化遺産の登録を申請するなど、書写書道に追い風が吹いています。書文協では、古くから漢字を使う同文の国である隣国「中華人民共和国(中国)」の書法(書道)団体と協力し、書道を国際的に発展させるよう努力しています。

具体的には令和6年も秋に東京・上野公園の東京都美術館で開く予定の「第57回国際書法芸術展」(主催:国際書法芸術協会、中国書法学院、後援:書文協など予定)に積極的に参加致します。過去1年の書文協主催コンクールの優秀作品の中から選んだ「博選証」作品(昨年は196点)を出品し展示する予定。書文協関係者が一堂に集まる機会も作ります。同展示会の今後の広報にご注意ください。

 

<特別賞受賞者6名>

◆大賞
星本京香(佐賀県立武雄高等学校2年)
◆中国大使館文化部賞
佐藤萌々香(神奈川県・中央大学附属横浜高等学校3年)
◆中央審査委員会賞
蜷川希衣(東京都中野区立桃園第二小学校5年)
◆日本書字文化協会会長賞
植西美侑(一般、大阪府)
◆青梅市日本中国友好協会会長賞
中野明舞音(大阪府立摂津高等学校1年)
◆日中文化交流促進会理事長賞
関口美夢(東京都立上水高等学校1年)
(下の写真は右側から星本作品以下上記の順)

 

 

 

令和6年度書検実施のご案内

書検(全日本書字検定試験、公益財団法人文字・活字文化推進機構後援)の実施は昨年度に続いて2年目になります。前期は5月後半、後期は11月前半の実施予定。しかし、今年度の前期は6月29日から8月15日の間の実施とします。とても有意義な試験です。詳細は改めて広報しますが、多くの方の参加を期待します。

書検は、字の上手さを審査するのではなく、学習指導要領に定められた書写書道の基本が何処まで身に付いているかを硬筆・毛筆併せて学年段階ごとに知識・技能にわたって調べる全国で初めてのテストです。書写書道の学びを深め、書道を生涯学習にするために行われるものです。

 

8級から3段まで11ランクで実施

受験ランクは8級から8段まで16ランクありますが、今回は8級から3段まで実施されます。段級ごとに指定された硬筆・毛筆両方(8-4級は硬筆のみ)の課題を、手本を見ずに書く実技試験と、図を見て評価の観点語句の意味を問われる筆記試験で構成されます。何段・級を受験するか、担当の先生と相談して決めてください。半月(今年の前期試験は1ヶ月)ほどの期間内のどれか1日を選んで、教場などで実施してもらいます。費用は、初年度はトライアルでしたので無料としましたが、今年度は先に配る観点語句一覧表を含め有料(段級により異なります)とします。所要時間は段級により異なります。

書検は字の上手いかどうかを競うものではないので、教室全体で和気あいあいと取り組むのに適しています。そして、書塾メンバーの書写書道に対する理解度が分かり、その後の指導の力のいれどころが分かります。

また、この試験は、試験を受けることによって「覚える」ことを重視しており、試験で出てくる語句・用語の一覧表(観点語句の一覧表)を受験者に事前に配ります。それによって、例えば「止め、はね、払い」とはどういう事か等を覚えます。 是非、ご検討ください。

 

 

 

第13回総合大会指定課題・解説

― 課 題 ―

大きなテーマとして「日本」というイメージで、課題を統一しました。指導者の負担軽減のため、今回も課題は、過去の大会に出題されたものの中から選びました。句読点や改行は、参考手本でご確認ください。
課題は以下の通りです。

 

<ひらがな・かきかたコンクール>

◆年少・年中
くし
◆年長
せんす
◆小1
おもてなし
◆小2
ふじさんは、うつくしいやま
◆小3
ゆかたをきて、まつりにでかけます。

 

<全国学生書写書道展>

◆年少・年中

◆年長
もり
◆小1
まつり
◆小2
なでしこ
◆小3
つなぐ手
◆小4
花さく里
◆小5
森の水車
◆小6
天下の険
◆中1(楷書・行書) 
奥の細道
◆中2(行書)
枯山水の庭
◆中3(行書)
富士の雲海
◆高校・漢字
我以外皆我師(吉川英治)
◆高校・かな 
梅雨晴れの わたくし雨や 雲ちぎれ (松尾芭蕉)
◆大学・漢字
山上有山路不通  柳陰多柳水西東 (夏目漱石)
◆大学・かな
いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな

 

<全国硬筆コンクール>

◆年少・年中
つきみ
◆年長
いろはうた
◆小1
おはぎをたくさんたべました。
◆小2
山のもみじが、とてもきれいです。
◆小3
夕やけこやけで 日がくれて 山のお寺の かねが鳴る
◆小4
お花見、七夕祭り、くり拾い、雪合戦。思い出がふえていく。
◆小5
夕立ちや草葉をつかむ むらすずめ
熱き日を海に入れたり最上川
◆小6
日本料理は季節感が豊かです。魚貝や野菜などの食材は多く出る時が味も良く、その時期に使うことを大事にします。
◆中学
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。夏は夜。月の頃はさらなり。
闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。
◆高・大・一
卯の花の匂う垣根に 時鳥早も来鳴きて 忍音もらす夏は来ぬ
さみだれの そそぐ山田に早乙女が裳裾ぬらして玉苗植うる夏は来ぬ

 

 

― 課 題 解 説 ―

課題解説は教場の指導者を対象に書いています。コンクール出品を機に、生徒さんと課題を巡る話が交わされることを期待しています。

 

<ひらがな・かきかたコンクール>

◆年長:せんす
扇子(せんす)とは、扇(あお)いで風を起こす道具の一つ。また、儀礼や芸能で用いられる。古くは扇(おうぎ)と呼ぶのが普通だった。折りたたむことができ、日本で発明されたとの説もある。 「おうぎ」という言葉は古くは「あふぐ」(扇ぐ)の派生形の「阿布岐」(あふぎ)と呼ばれた。
◆小1:おもてなし
「おもてなし」は、「もてなし」に丁寧語「お」を付けた言葉であり、その語源は「モノを持って成し遂げる」という意味です。また、「おもてなし」のもう一つの語源は「表裏なし」、つまり、表裏のない「心」でお客様をお迎えすることです。お客様や大切な人への気遣いや心配りをする心が築かれた世界に誇れる日本の文化といえます。
◆小2:ふじさん 
富士山(ふじさん)は、静岡県(富士宮市、富士市、裾野市、御殿場市、駿東郡小山町)と山梨県(富士吉田市、南都留郡鳴沢村)にまたがる活火山です。標高3776.12 m、日本最高峰(剣ヶ峰)の独立峰で、その優美な風貌は日本国外でも日本の象徴として広く知られています。太古から信仰の対象として人々に崇められ、数多くの芸術作品を生み出している富士山は、平成25年(2013)に世界文化遺産へ登録されました。

 

<全国学生書写書道展>

◆小2:なでしこ
花の名前。6月頃から8月頃にかけて開花。ピンク色の可憐な花。縁がこまかく切れ込んでいる。我が子を撫(な)でるようにかわいい花であるところからこの名前がついた。
◆小5:森の水車
「森の水車」は童謡の名前。水車は今どきの子供に分からない。水車は、水力発電所の心臓部と言えるもので、高いところから落下してくる水や、勢いよく流れ込んでいる水の力で回転します。 つまり、水車は水のエネルギーを、回転する機械エネルギーに変えるものです。
◆小6:天下の険 
鳥居忱の作詞、瀧廉太郎の作曲による歌「箱根八里」の冒頭に出てくる歌詞「箱根の山は、天下の険」で知られます。険は、けわしい。江戸時代、箱根の山を越える約八里の行程は、難所で知られていました。その坂道は急坂も多く、常に泥でぬかるんでいて、行き来する人々にとって、非常に体力を消耗する難所でした。
◆中1:奥の細道
俳諧(はいかい)とは、連歌の発句(五、七、五)が独立したものを言います。著名な俳諧師は江戸時代の松尾芭蕉。明治になって正岡子規が俳句と命名しました。江戸時代の著名な『奥の細道』は、松尾芭蕉による江戸中期の俳諧紀行です。
元禄2年(1689)3月、芭蕉は門人の曽良と江戸深川(現・東京都江東区)を出発、奥州・北陸の名所・旧跡を巡り、2,400キロを踏破して8月に岐阜県・大垣市に至るまでの紀行を、発句をまじえて記したもの。
◆中2:枯山水の庭
枯山水とは、水を用いずに岩や砂などで山水を表現した日本庭園の様式の一つ。石庭。 京都の龍安寺(りょうあんじ)等がよく知られます。
◆高校漢字:我以外皆我師(吉川栄治)
小説『宮本武蔵』『三国志』などで知られる作家の吉川英治氏が座右の銘としている言葉です。
自分以外は全て、自分に何かを教えてくれる先生である」という意味。尊敬に値しないような相手、悪い人間であっても、「反面教師」としてつまり逆の意味の先生として捉えればよいのです。
◆高校かな:梅雨晴れの わたくし雨や 雲ちぎれ(松尾芭蕉) 
中山道を歩いていた松尾芭蕉が詠んだ句です。私雨とは狭い範囲に急に降り出す雨のこと。梅雨晴れとは、梅雨の晴れ間のことです。その晴れ間であるが五月晴れ(さつきばれ)に、雲がちぎれて、狭い範囲ににわか雨が降ったというのです。
◆大学漢字:山上有山路不通 柳陰多柳水西東(夏目漱石) 
夏目漱石は、漢詩をよく作りました。これはその一つ、七言絶句の「題自畫」の前の2節です。全文は 山上有山路不通 柳陰多柳水西東 扁舟盡日孤村岸 幾度鵞群訪釣翁(自作の画に詩をつける =題名、山の上にさらに山があって、その向こうまでは道が通じていない 柳の陰にはさらに柳が茂り、川が西へ東へ流れている 小さな舟が一日中、街から遠くぽつんと離れた村の川岸につないだままになっていて そこで釣りをしている老人のもとへ、ガチョウの群れが何度か訪れてくる)
◆大学かな:いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな 
作者は、伊勢大輔(いせのたいふ/いせのおおすけ)。紫式部や和泉式部とも親しい間柄でした。歌の意味は「古い時代の奈良の都に咲いていた八重桜が、今日は宮中でひときわ美しく咲きほこっている」、九重は宮中を指す言葉。

 

<全国硬筆コンクール>

◆年長:いろはうた
仮名47文字を、重複させずに作られた七五調の文章。10世紀末から11世紀の半ばにできたようだが、作者不明。文は「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ・・・・」 意味は「匂いたつような色の花も散ってしまうのに 永久に変わらないことがあろうか・・・・」
◆小5:夕立や草葉をつかむむらすずめ 熱き日を海に入れたり最上川 
前の句は江戸中期の俳人・与謝蕪村。「夕立が来て、雀の群れが雨宿りのために草の葉を掴んで隠れようとしている」・後の句は松尾芭蕉の奥の細道」に載っています。熱い日が、最上川によって海に流し込まれ終わろうとしている」。現在の山形県酒田市で詠んだ句です。
◆中学:春はあけぼの・・・
平安時代中期、宮中に仕えた清少納言によって書かれた平安時代の著名な随筆「枕草子」の一部です。枕草子は清少納言がいろいろなものに感じた思いをつづったエッセイ。全体で約300の章で構成されている。春はあけぼの、はその書き出しとして有名です。
◆高大一:卯の花の匂う垣根に時鳥早も來鳴きて忍音もらす夏は來ぬ 
昔の小学唱歌「夏は来ぬ」の一節です。卯(う)の花の、匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ
卯の花は、初夏に白い花を咲かせる「ウツギ」の花のこと。旧暦の4月は卯月。ホトトギスはカッコウ科に分類される鳥。ウグイスなどへの托卵で知られます。「早も来鳴きて」は、「早く来て鳴いている」の意味で、「忍音」は、人知れず声を潜めて泣くことのほか、「ホトトギスの初音のこともいい、この歌では、この年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を指します。