~日本書字文化協会機関紙 No101~
令和5年(2023年) 年末年始号
2022年12月・2023年1月

 

当機関紙は2カ月間休載となりましたので、年末年始号として、まとめて発行します。令和5年もよろしくお願い致します。

 

<目次>
◆ご挨拶 会長・大平 恵理
◆第8回臨書展実施要項
◆第1回「書検」の紹介YouTube開設へ
◆中野・多摩・川崎校の合同展示会開催
◆全書研62回全国大会(東京)記録

 

一般社団法人日本書字文化協会(書文協)
本部 〒164-0001 東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階
電話03-6304-8212 / FAX03-6304-8213
Eメールinfo@syobunkyo.org ホームページhttps://www.syobunkyo.org

 

 

 

ご 挨 拶

一般社団法人・日本書字文化協会
代表理事・会長 大平 恵理

ご 挨 拶

 

手書きの魅力を伝えていきたい

 新しい年を迎えるにあたり皆様、旧年を振り返り、そして新年の抱負を様々な思いで描かれたのではないでしょうか。心身ともに健やかな年となることを心より祈念いたします。
一般社団法人日本書字文化協会と言う団体を率いて参りました。また多くの団体にお世話になり、これらたくさんの方々に支えられ、ときには勇気を頂き、前に進むことができました。お陰さまで書文協は間もなく創立から13年の時が経とうとしています。この場をおかりし、深く感謝申し上げます。
振り返ると様々な思いがこみ上げますが、新たな年に向け、そしてさらに先を目指す中でも、自問自答しています。新年に限らず時折自分に問いかけますが、何度問い質しても、「手書き文字の大切さ」の思いが起ってきます。これは日本のみならず、全人類に言えることではないでしょうか?

 

皆違う表現が手書きの魅力

日々生徒さんに教えたり、作品の審査をしたり、教材を作ったりするとき、何に気を付けているか?それは、線の長さ、方向、空きなど、文字と全体のバランスです。毛筆であれば、センチメートルの単位ですが、日常の筆記具であるえんぴつやペンなど硬筆となると、長さや空きについてはミリメートルの単位、方向では10度前後で調整が必要です。しかも定規も使わない、手本がなくても書けるようにするのが、手書きには必要で、こう考えるととても酷な学びです。できれば、避けて通りたい、そう思うのが普通ではないでしょうか。でも、気を付けながら書いた結果なら、ずれてもいい、大事なのは調整したりバランスを考えて書くことで自然と呼吸が調い、それが息遣いまで伝わるような、一人ひとり違う表現になるのが手書きの魅力と考えます。
「手書きの魅力」を次世代に伝えていきたい。今時代はSNS、ICTが様々な可能性を広げています。書文協も遅ればせながら改革し、紙やテキストも使い、手触りのある実感を持った学びと融合を図りながら前進してまいりたいと存じます。皆様のご指導ご鞭撻をどうぞよろしくお願い致します。

 

第8回臨書展実施要項

臨書とは、大まかに言えば、書の古典を模写することを言います。書道を学ぶ上で、書く技術を高めるためのとても大事な学びとされています。高校書道科のカリキュラムでは、臨書が重視されているのがわかります。また、古典の多くは中国の優れた書作品です。国際化時代の異文化理解の手始めとして、漢字同文の隣国の文化を知ることはとても意義があります。もちろん日本の古典臨書作品も大歓迎です。
こうした目的から、書文協は早いうちから臨書に親しめるように工夫した臨書展を開催、今年度で8回目となりました。

 

優秀作は中国・南京での国際展に出品

今回は、夏に中国・南京で開かれる国際展に優秀作品を出品します。主に臨書の部から選びますが、楷書書写の部でも特に優秀な作品があれば出品を検討します。南京での展示作品は秋に東京美術館で開催の展示会にも飾られるかもしれません。南京への出品は無料ですが、郵送料を一部負担していただく場合がありますので、あらかじめご了承ください。皆さん、楽しみに出品しましょう。

1.主催     一般社団法人日本書字文化協会

2.後援(予定)
青梅市、中華人民共和国駐日本国大使館文化部、東京都青梅市日本中国友好協会、中国書法学院、国際芸術家連盟、NPO法人日中友好交流促進会
蘇州・寒山寺、蘇州呉昌碩研究会

3.大会役員
実行委員長  渡邉啓子
副実行委員長 池田圭子

4.審査員
加藤東陽(書文協中央審査委員長、東京学芸大学名誉教授)
加藤堆繋(同委員会委員、東京学芸大学教授、前文部科学省教科調査官)
豊口和士 (文教大学教授、文部科学省教科調査官)
大平恵理(日本書字文化協会会長)

5.作品〆切
5年4月20日(水)必着

6.賞
大賞 (臨書の部1・2から)、中華人民共和国駐日本国大使館文化部賞、中央審査委員会賞、日本書字文化協会会長賞、青梅市日中友好協会会長賞、日中文化交流促進会理事長賞
優秀賞、本賞(特選、金・銀・銅賞)

7.展示会
令和5年6月に、青梅市の澤乃井ガーデンギャラリーで予定定

8.応募資格
全部門とも年齢不問

9.募集部門

<臨書の部>   用紙は半切、八ッ切、半紙
・自由課題(高校書道教科書ⅠⅡⅢを基準とする。中国・日本古典共に。4文字以上。)
・常設課題(漢詩・楓橋夜泊)の1句以上
1句中の四文字、三文字でも可
漢詩「楓橋夜泊」
月 落 烏 啼 霜 満 天
江 楓 漁 火 對 愁 眠
姑 蘇 城 外 寒 山 寺
夜 半 鐘 声 到 客 船

<楷書書写の部> 下記から選ぶ。用紙は半紙、八ッ切
・1字:月 満 天 漁 火 城 外 の中から1文字
・2字:漁火
・3字:寒山寺

※用紙はいずれも縦長、縦書き使用。落款は、落款印のみは不可。

10.手本
指定課題の部は漢詩・楓橋夜泊の拓本をA3判に複写したものを、楷書書写の部の手本(大平恵理揮毫)はA4判で計9枚。手本はいずれも1枚当たりA4判107円、A3判214円(税別)。希望者は送料520円を加えた相当額分の切手を添えて、書文協本部臨書展係りに申し込んでください。

11.出品方法
①作品に出品票を貼付する(出品票には※出品券を貼付)

②応募総括用紙(振込受領書を貼付)、応募明細用紙を同封し送付
※臨書展はこれまで年度末行事としていましたが、その枠から外します。

出品時の学年は令和5年度の新学年を書いてください。

※応募書類は書文協ホームからダウンロードできます。<個人別事前参加登録用紙><応募総括用紙><応募明細用紙><出品票>があり、説明文書として<事前参加登録制について>がそれぞれ書文協ホームページにアップされています。
書文協ホームページのフロントページ上部にあるメニュー欄の1列目、右端にある「ダウンロード」にカーソルを当てると、詳細項目がプルダウン表示されます。その最初「書類ダウンロード」に様々な書類49項目のダウンロードがリンクされています。その中から大会関係を選んでダウンロードし、ご利用ください。また、書文協に直接申し込んでいただくこともできます。
※書文協では全国書字検定試験、ライセンス試験、全国書写書道大会、講習会等における事前参加登録制を実施しています。
参加予定者には個人別事前参加登録用紙を提出することで出品券が発行されます。
応募の際は、応募総括用紙、応募明細用紙を作品(必ず出品券を貼付)に必ず添えてください。出品券の貼付は、出品票の所定欄となります。出品票はダウンロードもできます。

12.出品料
臨書の部は1点1,000円(幼児・小中学生は700円)
楷書書写の部 同900円(幼児・小中学生は600円)
個人出品は一律1点1,500円
※いずれも消費税別
※出品・参加は誰でもできますが、書文協会員の場合は会員割引があります。出品における事務作業等の費用として行われるものです。書文協会員規則により、団体会員Aは5%、団体会員Bは10%、団体会員Cは15%が割り引かれます。会員制度の詳細はお問い合わせ下さい。団体審査(一審)を行った場合は出品料からさらに5%引かれます。出品にあたり、割引は学校、団体会員のみとなります。

13.振込先
ゆうちょ銀行
名義 一般社団法人日本書字文化協会
=振込用紙にてお振込みの場合=
記号 00130-1-728113
=上記以外からお振込みの場合=
店名 〇一九(ゼロイチキュウ)口座番号 当座 0728113

14.作品提出先
〒164-0001
東京都中野区中野2-11-6 丸由ビル3階、
書文協本部
電話 03-6304-8212
FAX 03-6304-8213
書文協ホームページ https://www.syobunkyo.org

 

ご 挨 拶

渡邉啓子 臨書展実行委員長(書文協副会長)

漢字は3300年前、古代の中国で生まれました。秦時代に文字の統一がなされ、3世紀ごろ日本に伝来しました。文字を持たなかった日本民族は、漢字から仮名を生み出し、漢字・仮名交じりの日本語が出来上がったのです。日中はまさに同文の隣国なのです。
臨書は書写書道の大事な学びです。
中国蘇州市・寒山寺より寄贈された像を安置した日本寒山寺、「楓橋夜泊」の石碑を抱く沢井の地を舞台に中国との交流を続けてまいりました。その一角にある美術ギャラリーにて優秀作品展を開催しておりますが、寒山寺と石碑を直にみていただくと共に自然豊かな土地でのひと時を楽しんでいただいております。
この展覧会では、低年齢の方から一般の方まで臨書に触れていただいています。
臨書の楽しさを体験してください。
開催にご協力いただいた皆様に厚くお礼申し上げます。

青梅市沢井にある大日本寒山寺

 

 

 

第1回書検定を6月実施へ

書検(全日本書字検定試験)の第 1 回を、今年 6 月に実施予定です。自分に書写書道の 知識や技術が身に付いているかを調べるものです。字の上手、下手で段級を付与するものではありません。書道を生涯学習にし、文字文化を発展させるために行います。皆さん、ぜひ参加してください。春になったら参加募集を始めたいと思います。

主催:一般社団 法人日本書字文化協会
後援:公益財団法人文字・活字文化推進機構
実施要項は書文協ホームページ
https://syobunkyo.org でご覧ください。
「書検」という題字が入ったバナーから見られます。

 

 

新年度に詳細発表予定

テストは、幼稚園児から小学・中学・高校・大学・一般まで 20 段階に分けて行います。 その学年までに体得していて欲しい書写書道の基礎知識や実技について、硬筆、毛筆の両 方について検定するものです。例えば、書く時の「止め、はね、払い」についてどこまで 知っているか、実際に書けるか、などを調べるものです。毎年 6 月実施の予定で、前学年の学びの振り返りとなります。不合格の人には追試験の機会を設けます。

書道を生涯学習として学び続けていただくには、幼稚園教育要領、学習指導要領に定められた基礎基本を身に付けることが大事です。書検は、正しい日本語の継承・発展を目標にする書文協が長年にわたって準備してきました。コロナ禍で実施が数年延びました。ホームページ(上記「書検」のバナー)に順 次、情報を加えていきますのでご覧ください。ホームペ ージはスマホからも楽に読める構造になっています。
試験の内容など、詳しいことは新年度になって発表予定です。

   

紹介YouTube開設へ

インターネット上のコミュニテイサイトのことを指すSNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)が盛んな状況に応えるため、書検紹介を画像中心に行うYouTube(ゆーちゅーぶ)をプロ集団「チーム海援隊」に制作していただきました。1月下旬にはオープンの予定です。約1分20秒。軽快なバックグラウンドミュージュックンに乗って、生徒たちが硬筆や毛筆に取り組む様子、作品展示も紹介されており、書写書道を取り巻く世界を知ることができます。詳細は書文協が電話やFAX、メールで様々な質問にお答えします。

 

3校合同展示会を開催

書文協附属書写書道専修学院の中野・多摩・川崎3校合同で生徒作品の展示会を1月7(土)、8(日)の両日、東京都中野区のもみじ山文化センター(なかのZERO)で開催しました。コロナ禍で作品の公開という晴れの舞台を長く開けなかったため、防疫に完全を期して決行しました。多くの保護者の皆様にも手伝っていただきお礼申し上げます。展示会の様子をグラビアで紹介します。

 

 

 

全書研第62回全国大会(東京)開く

全日本書写書道教育研究会(全書研)は令和4年11月4,5日に、東京都江戸川区内を主会場に、第62回全国大会を開きました。大会主題は「文字文化に関わる資質・能力の育成を目指す書写書道教育」。4日は江戸川区立南小岩第二小学校の公開授業、分科会などが行われ、5日にはタワーホール船掘で総会、研究発表などが行われました。

全書研は、学校の先生方による書写書道の研究組織。書文協は、書を生涯学習とする基礎を培うのは学校教育と考えており、全書研はそのための強力なリーダー組織として緊密な連携を大事にしています。全書研会長の加藤祐司(東陽)氏は文部科学省の教科調査官も経験、書写書道教育の権威者。書文協の中央審査委員会委員長も務めていただいています。同理事長で大会会長の長野秀章氏、同大会運営委員長の加藤泰弘氏、大会の指導・講評に当たった文科省教科調査官の豊口和士氏も中央審査委員になっていただいています。

 

「文字文化学習の発展を」加藤会長

総会の冒頭あいさつに立った加藤会長(写真)は、全書研の第一義は研究活動であるとして「大会テーマに掲げた『文字文化』学習の育成に、幼・小・中・高・大学がどのようにアプローチするのかが大事だ」と大会への期待を示されました。「東京大会が文字文化学習の更なる充実・発展への原動力に」という加藤委員長の期待通り、大会では活発な議論が交わされました。

 

注目された小室信夫氏の高校部会研究発表

大会では小室信夫氏(元全日本高等学校書道教育研究会理事長)が高校部会の研究主題「文字文化と豊かに関わる書道の学習活動」で研究発表されました。テーマは「中高一貫教育における書写・書道教育の取り組み(実態調査報告)」。学習指導要領で「高校の芸術科・書道と国語科書写(小中学校)との円滑な接続を図る」がうち出されたが、現状は理念倒れになっており「シンボリックな研究発表」(長野全書研理事長)として注目を集めた。

同研究発表は私立中高一貫校11校に対しアンケート結果を行いまとめたもの。うち9校については回答内容が公開され、全書研発行の同大会紀要にも掲載された。各校で取り組みに差があるが、具体的研究のスタートとして意義は大きい。